子どものころは、夢を語ることができました。
「大人になったら、こんなことをしたい」
「こんな人になりたい」
「こんな仕事をしてみたい」
そんなことを、恥ずかしがらずに話していたのではないでしょうか。
ところが、年齢を重ねると、いつの間にか夢を語らなくなります。
「もう若くないから」
「今さら夢なんて恥ずかしい」
「現実を考えたら、そんなことは言っていられない」
そんな気持ちが出てくることがあります。
人生を長く生きてくれば、思い通りにならないこともたくさん経験します。
努力してもうまくいかないこともあります。
自分の力だけでは変えられない出来事があることも知ります。
だから、夢を見るよりも、現実を見ることのほうが大切だと思うようになるのかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか。
私は、年齢を重ねたからこそ、もう一度、夢を描いていいと思います。
それは、若いころのような大きな成功を夢見るという意味だけではありません。
「もっと誠実な人になりたい」
「人に優しくなりたい」
「自分の経験を誰かの役に立てたい」
「これからも学び続けたい」
「自分らしい生き方を見つけたい」
「生涯を通じて、自分を少しずつ成長させたい」
こうした思いも、立派な夢です。
ジェームズ・アレンは、夢や理想について、次のように語っています。
「気高い夢を見ましょう。そうすれば、あなたは夢見た通りの存在となるでしょう。
あなたの抱くビジョンと理想は、未来のあなたの姿そのものなのです。
低俗なものであれ高尚なものであれ、ビジョン(怠惰な願いではありません)を心に描き続ければ、それは必ず形となります。
なぜなら、人は、最も愛しているものへと引き寄せられるからです。
自身の様々な思いによってもたらされる結果を、あなたは必ず受け取ることになるでしょう。
手にするに値するものだけを得ることになるでしょう。
今どのような環境にあろうとも、自身の思い、ビジョン、理想にしたがって、あなたは下降するか、その場に留まるか、もしくは上昇するかのどれかです。」
この言葉は、「夢を持てば何でも願い通りになる」という単純な話ではありません。
夢や理想を持つことによって、今日の自分の生き方が変わっていくということを教えてくれているのだと思います。
そして、その「今日」の積み重ねが、やがて一人一人の「生涯」になります。
だから、夢を描くことは、未来だけを見ることではありません。
今日をどう生きるかを決めることでもあるのです。
この記事では、「いくつになっても夢を描くこと」が、なぜ生涯現役の生き方につながるのかを考えてみます。
なぜ年齢を重ねると「夢」を語れなくなるのか
子どものころは、夢を語ることに、それほど抵抗がありません。
「宇宙飛行士になりたい」
「お医者さんになりたい」
「スポーツ選手になりたい」
「こんなことをやってみたい」
自由に話すことができます。
ところが、大人になると、夢を語ることが少なくなります。
なぜでしょうか。
一つには、現実をたくさん知るようになるからだと思います。
お金のこと。
仕事のこと。
家族のこと。
人間関係のこと。
健康のこと。
年齢のこと。
社会の厳しさ。
自分の能力の限界。
いろいろなことを知るほど、
「そんなことは簡単にはできない」
と考えるようになります。
そして、過去に失敗した経験があれば、
「どうせまた失敗する」
と思ってしまうこともあります。
さらに、
「そんな夢を語ったら、笑われるのではないか」
という気持ちも出てきます。
特に年齢を重ねると、
「今さら何を言っているんだ」
という自分自身の声が聞こえてくることがあります。
でも、ここで一つ考えてみたいのです。
年齢を重ねたことと、夢を持つことができなくなることは、本当に同じなのでしょうか。
そうではありません。
年齢を重ねたからこそ、見えてくる夢もあります。
若いころは「何者かになりたい」と思っていた人が、人生経験を重ねることで、
「人の役に立つ人間になりたい」
と思うようになるかもしれません。
若いころは「成功したい」と思っていた人が、
「自分の心を穏やかにして生きたい」
と思うようになるかもしれません。
若いころには見えなかった大切なものが、長い人生を歩いてきたからこそ見えてくることがあります。
ですから、夢は若者だけのものではありません。
夢は、年齢とともに変わっていいのです。
むしろ、人生経験を重ねた人だからこそ描ける夢があります。
夢は「未来の絵」ではなく、今日の生き方を変えるもの
夢というと、私たちは「将来実現したいこと」を考えます。
「いつか、こうなりたい」
「いつか、こんなことをしたい」
だから、夢は未来にあるものだと思います。
もちろん、それは間違いではありません。
しかし、今回のジェームズ・アレンの言葉を考えると、夢にはもう一つの大切な働きがあります。
それは、
夢が今日の自分に働きかけることです。
たとえば、
「誠実な人間になりたい」
という理想を持っているとします。
すると今日、誰かにうそをつきそうになったとき、
「これは、自分がなりたい人間の姿と合っているだろうか」
と考えることができます。
「人に優しい人になりたい」
と思っているなら、今日、困っている人を見たときに、声をかけるかもしれません。
「生涯を通して学び続けたい」
と思っているなら、今日、本を一ページでも読むかもしれません。
このように考えると、
夢は未来にあるけれど、夢が働く場所は今日なのです。
これは、とても大切なことではないでしょうか。
夢は、未来に到着するためだけのものではありません。
夢は、
「今日、どう生きるか」
を教えてくれるものでもあるのです。
だから、
夢は未来を直接つかむためのものではなく、未来につながる今日の生き方を変えるもの
と言えるのだと思います。
「こんな人になりたい」という理想があれば、今日の選択が変わります。
今日の選択が変われば、今日の行動が変わります。
行動が繰り返されれば、少しずつ習慣が変わります。
習慣が変われば、やがて自分自身のあり方も変わっていきます。
つまり、
理想 → 今日の選択 → 行動 → 習慣 → 人間としての成長
という流れが生まれます。
ジェームズ・アレンが、
「あなたの抱くビジョンと理想は、未来のあなたの姿そのものなのです。」
と言っているのは、こういうことなのではないでしょうか。
理想は、ただ頭の中に飾っておく絵ではありません。
理想を持つことで、今日の自分が少しずつ変わっていく。
その変化の積み重ねが、未来の自分をつくっていくのです。
「今日を大切にする人」は、夢や理想を持っている人なのかもしれない
「今日を大切に生きましょう」
という言葉があります。
これは、とても大切な言葉です。
しかし、「今日だけを考えて生きる」という意味ではないと思います。
むしろ、
未来に対する理想があるからこそ、今日を大切にできる
とも考えられます。
たとえば、庭に花を咲かせたい人は、今日、水をやります。
一年後に花が咲くことを願っているからこそ、今日の水やりを大切にするのです。
人間も同じです。
「こんな人になりたい」
という未来の姿があるから、
「では、今日は何をしようか」
と考えることができます。
人生全体を一日で完成させることはできません。
私たちは、今日という一日しか生きることができません。
明日になれば、そのときの「今日」を生きる。
その繰り返しが、一週間になり、一年になり、やがて一人の人生になります。
つまり、
「生涯」とは、「今日」の積み重ねなのです。
だからこそ、夢や理想を持つことは、今日を大切にすることと矛盾しません。
むしろ、深くつながっています。
「私は、これからどんな人生を生きたいのか」
と考える。
そして、
「そのために、今日の私はどう生きようか」
と考える。
この二つをつなぐことが大切なのです。
夢を持つことは、今日から逃げることではありません。
夢を持つことによって、今日をより大切に生きることができるのです。
だから、年齢を重ねた人にも夢が必要なのだと思います。
「今さら夢なんて」と思う必要はありません。
むしろ、
「これからの私は、どんな人間になりたいのだろう?」
と問いかけてみる。
その問いから、新しい人生が始まることがあります。
夢は、若い人だけのものではありません。
今日を生きるすべての人のものなのです。
年齢を重ねたからこそ描ける「気高い夢」がある
ジェームズ・アレンは、
「気高い夢を見ましょう。そうすれば、あなたは夢見た通りの存在となるでしょう。」
と語っています。
ここでいう「気高い夢」とは、必ずしも大きな成功を意味するものではありません。
有名になることでも、大金持ちになることでもありません。
むしろ、
「どんな人間として生きたいのか」
という、自分の内側にある理想のことではないでしょうか。
たとえば、
「正直な人でありたい」
「人に優しくできる人になりたい」
「怒りに振り回されない人になりたい」
「困っている人を助けられる人になりたい」
「自分の弱さを知りながら、それでも善く生きたい」
「年齢を言い訳にせず、学び続けたい」
こうした願いも、立派な夢です。
そして、このような夢は、年齢を重ねた人だからこそ、より深く持てることがあります。
若いころには、夢というと「何を手に入れるか」を考えがちです。
仕事で成功する。
お金を得る。
家を持つ。
社会的な立場を得る。
もちろん、そうした夢も悪いものではありません。
しかし、人生を長く生きてくると、人生にはそれだけではない大切なものがあると分かってきます。
人とのつながり。
心の安らぎ。
誠実さ。
思いやり。
学ぶこと。
誰かの役に立つこと。
自分らしく生きること。
そして、自分の心を育てること。
そうしたものの価値が見えてくるのです。
だから、人生後半の夢は、若いころの夢をそのまま取り戻す必要はありません。
今の自分だからこそ描ける夢を持てばいいのです。
「これから何を手に入れるか」だけではなく、
「これから、どんな人間になっていくか」
を夢にしてもいい。
これは、とても大切なことだと思います。
夢を持ち続けることが、生涯現役につながっていく
「生涯現役」という言葉を聞くと、いつまでも仕事を続けることを思い浮かべる人もいるでしょう。
もちろん、仕事を続けることも一つの生涯現役です。
しかし、もっと広く考えることもできます。
生涯現役とは、
「人生の最後まで、自分自身を育て続けること」
なのではないでしょうか。
「もう自分は完成した」
と思った瞬間、人は成長を止めてしまいます。
しかし、
「まだ、こうなりたい」
と思っている人は、今日も自分を育てることができます。
「もっと人に優しくなりたい」
と思えば、今日の言葉を変えることができます。
「もっと心を強くしたい」
と思えば、今日の困難から逃げずに学ぶことができます。
「もっと知りたい」
と思えば、今日、本を開くことができます。
「誰かの役に立ちたい」
と思えば、今日、できる小さな親切を探すことができます。
このように考えると、夢は人を若返らせる魔法ではありません。
そうではなく、
「今日も自分を育てよう」という気持ちを生み出す力
なのです。
だから、夢を見ることをやめないことそのものが、生涯現役の生き方なのかもしれません。
年齢を重ねても、
「まだ学べる」
「まだ変われる」
「まだ成長できる」
「まだ人に与えられるものがある」
と思える。
その心がある限り、人は今日を生きることができます。
「もう遅い」と思ったときに、思い出したいこと
人生の途中では、
「もう遅い」
と思うことがあります。
若いころにやらなかった。
もっと早く始めればよかった。
もう年齢的に難しい。
今さら変えることはできない。
そう思うこともあるでしょう。
確かに、時間を戻すことはできません。
20歳に戻ることもできません。
30歳のときと同じ体力を取り戻せないこともあります。
だからこそ、今の自分にできることを考える必要があります。
しかし、
「今までできなかった」ことと、「これからも何もできない」ことは同じではありません。
今日という一日は、まだ残されています。
そして明日になれば、また新しい一日があります。
その一日の中で、
「どんな自分でいたいか」
を選ぶことはできます。
これが、夢の持つ力です。
夢は過去を取り戻すためだけのものではありません。
これからの自分の方向を決めるものです。
夢は「結果」ではなく「方向」を与えてくれる
ここで、夢について一つ大切なことがあります。
夢を持ったからといって、必ずその結果が手に入るとは限りません。
人生には、自分では決められないことがあります。
どれだけ努力しても、思い通りにならないことがあります。
だから、
「夢を持てば必ず成功する」
と考える必要はありません。
ジェームズ・アレンの言葉も、単純な願望実現の話ではないと思います。
大切なのは、
夢や理想が、自分の向かう方向を決めることです。
たとえば、
「誠実に生きたい」
という理想を持っていれば、今日、誠実な選択をする。
「人を愛する人になりたい」
と思っていれば、今日、人に優しくする。
「生涯学びたい」
と思っていれば、今日、少しでも学ぶ。
その結果として、人生が少しずつ変わっていく。
だから、夢は「未来の結果を予約するもの」ではありません。
今日の生き方に方向を与えるものなのです。
まとめ 夢を描くことをやめない人は、今日を大切に生きる
ジェームズ・アレンは、
「あなたの抱くビジョンと理想は、未来のあなたの姿そのものなのです。」
と語っています。
この言葉を考えると、夢とは、未来に置いておくものだけではないことが分かります。
夢やビジョン、理想は、未来の自分を思い描くものです。
しかし、その未来の姿を思い描くからこそ、
「今日の私は、どう生きようか」
と考えることができます。
つまり、
未来の理想が、今日の生き方に影響するのです。
今日の選択が変わり、
今日の行動が変わり、
それが毎日積み重なっていく。
そして、その一日一日の積み重ねが、やがて一人の人生になります。
だから、
「今日を大切に生きる人は、夢や理想を持っている人でもある」
と言えるのかもしれません。
夢があるから、今日を大切にする。
今日を大切にするから、少しずつ理想の自分に近づいていく。
その積み重ねが、生涯をつくっていく。
これは、人生のどの時期にも当てはまることです。
子どもでも、大人でも、人生の後半にいる人でも同じです。
特に、年齢を重ねたときには、
「今さら夢なんて」
と思わないでほしいのです。
夢を持つことに、年齢制限はありません。
大きな夢でなくてもいい。
人に話せる夢でなくてもいい。
紙に書いてもいいし、心の中に静かに持っているだけでもいい。
「もっと誠実な人になりたい」
「もっと優しい人になりたい」
「自分の経験を誰かのために役立てたい」
「これからも学び続けたい」
「最後まで自分自身を育てたい」
そんな思いでもいいのです。
そして、夢を思い描いたら、
「では、今日の私はどう生きようか」
と考えてみる。
それだけでも、夢は単なる空想ではなくなります。
今日の一つの選択になります。
今日の一つの行動になります。
今日の一つの学びになります。
今日の一つの優しさになります。
そして、その小さな一つ一つが、未来の自分をつくっていきます。
「生涯現役」とは、いつまでも若者のように生きることではありません。
年齢を重ねても、「これからの自分」を思い描き、その理想に向かって今日の自分を育て続けること。
それもまた、生涯現役なのではないでしょうか。
人生は、「今日」の積み重ねです。
だからこそ、今日を大切にするために、未来の夢を描いてみましょう。
何歳になっても、
「私は、これからどんな人間になりたいのだろう?」
と問い続けてみましょう。
そして、その答えを胸に、
「では、今日をどう生きようか」
と考えてみましょう。
夢を見ることをやめない。
理想を手放さない。
そして、その理想を今日の小さな行動につなげていく。
それが、生涯を通して自分自身を育てる力になります。
いくつになっても夢を描こう。
その夢は、遠い未来だけを照らすものではありません。
今日のあなたの生き方を照らす、小さな灯りでもあるのです。
そして、その今日の積み重ねこそが、あなたのかけがえのない生涯になっていくのです。