ジェームズ・アレンは語ります。
セルフコントロールを誤解している人がしばしばいます。
セルフコントロールとは、建設的な表現に結びついたものであって、破壊的な抑圧ではありません。・・・
自己を制御する人は、人生、環境、運命をも制御し、どこに行こうとも幸せがついてまわるでしょう。
自己を制御しない人は衝動、環境、運命に翻弄されます。
そして、そのときどきの欲求が満たされないと落胆し、惨めな気持ちに陥ります。
生涯現役のためには、自分自身を良く知り、自分の長所を伸ばし、短所を改める「セルフコントロール」が大切になります。
健康を求めるならば、健康を促進する習慣をつけ、健康を阻害する習慣を改めなくてはいけません。
ジェームズ・アレンの言葉に学ぶ、「真のセルフコントロール」について書き綴らせて頂きます。
生涯現役に導く大きな力:セルフコントロール
セルフコントロールとは、自分自身の弱さと向き合いつつ、それを強さに変換していく行程であり、一朝一夕でなるものではありません。誰しもが、自分自身の乱れた生活習慣や勉強・仕事上における好ましくない習慣を改めようと決意をしても、それが続かないという経験をすると思います。
セルフコントロールは努力と忍耐なくしてなされるものではありません。しかし、努力と忍耐を要するものの全てが、セルフコントロールに繋がると考えるのは間違いです。
水中に生きる生物にとって重要な能力と陸上に生きる生物にとって重要な能力が異なるように、人は、自らがより良く生きるために必要な能力は人それぞれであることを知り、より良く生きるために必要な自己制御の在り方に意識を向けなくてはいけません。
自らを良く見せようとする目的でなされたセルフコントロールは、あなたの本来の持ち味を破壊し、抑圧します。
結果、あなたはいつも自分が自分ではない空虚さを抱え、自分の一挙手一投足に、不自然で、ぎこちないものを、誰よりも自分自身で感じることになります。
真のセルフコントロールは、幸せや成功というあなた自身にとって喜ばしいものを自らの人生において表現するためにこそあります。あなたを生涯現役に導く大きな力の一つに、あなたの本来の持ち味を存分に発揮するためのセルフコントロールがあるという視点が必要です。
三日坊主による落胆と惨めさの原因は、セルフコントロールに対する誤解にある
「人の長所と短所はコインの裏表のようなもの」とも言われますが、幸せな成功者とは能力においても、人格においても、欠点が一切ない人ではありません。
むしろ彼らの飾らない言動に接した時、「こういう人でもこういうことを言うのか、するのか」と驚くことも多いものです。
短所でさえ長所に見えてしまう魅力が彼らにはあります。
というよりは、それだけを切り取ったら欠点や短所でしかない性質や言動が、彼らが人知れず重ねている真のセルフコントロールの力で、その人全体の魅力として映るようです。
ジェームズ・アレンは語ります。
セルフコントロールを誤解している人がしばしばいます。
セルフコントロールとは、建設的な表現に結びついたものであって、破壊的な抑圧ではありません。・・・
自己を制御する人は、人生、環境、運命をも制御し、どこに行こうとも幸せがついてまわるでしょう。
自己を制御しない人は衝動、環境、運命に翻弄されます。
そして、そのときどきの欲求が満たされないと落胆し、惨めな気持ちに陥ります。
生涯現役で幸せな成功を目指す上で道しるべとすべき、「真のセルフコントロール」を得るためには、まず、セルフコントロールに対する誤解を取り除くことにある、と言えるでしょう。
セルフコントロール・自己制御のために積み重ねる、具体的な自己改善や自己鍛錬の努力の途上で、「三日坊主」と揶揄(やゆ)される状態に対して、誰よりも自分自身が自覚してしまい、落胆し、惨めな気持ちになるのは、あなたの中に、セルフコントロールに対する誤解があるだけなのかもしれないのです。
三日坊主を一年続ければ、それは三日坊主ではない
例えば、将棋や囲碁で強くなろうと定石を覚えます。
定石を覚え、いざ実戦においてそれを使おうにも、勝てない。むしろ定石を覚える前よりも自分が弱くなっているような状態を経験することがあります。
これは定石が盤上全体の一局面に当てはまるものであり、盤上全体を見通した上でなされる動き方であるにも関わらず、定石のみに意識が向いて盤上全体に目が向いていないから生じる現象です。
あなたが幸せな成功を目指す時、自分の弱さと向き合い、自分との闘いに人知れず取り組むことになるでしょう。
自分の弱さに打ち克つために、どういう方法があるのかと調べ、実践するでしょう。
ある時は望ましい成果を挙げ、ある時はうまくいかないという経験を積むことでしょう。
定石を覚え、実戦を積みつつ、盤上全体を見通すことで勝利の確率が上がるのと同様に、セルフコントロールも、試行錯誤を要します。
昔、こうした言葉を聞きました。「三日坊主を一年続ければ、それは三日坊主ではない」という言葉です。 初めて、この言葉を聞いた時には「どちらかと言うと、それは詭弁(きべん)ではないか?」と思ったのが、正直なところです(笑)しかし、40代になった今では、この言葉の深みを感じることができます。
自己改善、自己鍛錬は、目まぐるしく変化する状況や環境の中で、人知れず孤独に積み上げていく必要があります。その中にあって、自己改善、自己鍛錬を継続して、新たな習慣にまで高めるためには、決めたことを出来なかった時に、落胆しすぎることも、決めたことを出来た時に、有頂天になることも、望ましくありません。
「三日坊主を一年続ければ、それは三日坊主ではない」とは、一喜一憂することなく、人生という盤面全体における勝利の確率を上げることに意識を向けてごらんなさい、ということだと思うのです。
破壊的な抑圧のセルフコントロールの弊害について
感情のままに無軌道な怒りを露わにする人は、自分の弱さを克服するだけの強さを身に付けていない証拠です。
そして、人間として怒るべき時に怒りを覚えることができない人は、セルフコントロールを誤解しており、自他共に破壊的な抑圧の道を歩む可能性があります。
例えば、ある国なり組織なりが軍事力や暴力を背景に、他国に生きる人々やあなたの家族の生命を脅かしているとします。その国なり組織なりが、他国の人々やあなたの家族を誘拐していると表明して、なおかつ解放のために身代金を請求している、などという現実を目の当たりにして、相手の軍事力や暴力に対する対抗手段をこちらがきちんと整備しない、などと言えるのは明らかに破壊的な抑圧の道です。
自分の子どもが道の向こうで事故に遭った時に、赤信号を渡ってはいけないというルールに縛られて、駆け付けない親などいないはずです。
こうしたことは、自分の人生におけるセルフコントロールにも当てはまると同時に、真のセルフコントロールに目を向けた人のみが、自分の人生を越えた事象に対しても、破壊的な抑圧の道と創造的な解放の道の違いに対する洞察力を働かせることが出来るようになると思えます。
怒りの感情を例に、若干、極端な気がしつつも、破壊的な抑圧のセルフコントロールの弊害(へいがい)というべきものを述べてみました。
いずれにせよ、セルフコントロールに対する誤解は、破壊的な抑圧を生み出す可能性があり、その弊害としては、自分だけでなく、他人をも巻き込み、不幸や苦しみをもたらす、と考えます。
真のセルフコントロールとは建設的な自己表現
真のセルフコントロールは、最終的にあなたがあなたらしく幸せな成功を実現するためのものであり、あなたの持つ本質的な素晴らしさを、他者を害することなく解き放つことで人生に勝利をもたらすものです。
「自己を制御しない人は衝動、環境、運命に翻弄され、そのときどきの欲求が満たされないと落胆し、惨めな気持ちに陥る」と、ジェームズ・アレンが語るのは、自分の人生の幸せや成功を、外的な要因に左右されている間は、結局のところ、幸せや成功も手にすることがない、ということでしょう。
「自己を制御する人は、人生、環境、運命をも制御し、どこに行こうとも幸せがついてまわる」と、ジェームズ・アレンが語るのは、時として、自分の力だけではどうしようもない状況や出来事の中で生きる世界にあって、世間が盲目的に唱えるルールや常識に囚われる必要はないのだ、ということでしょう。
真のセルフコントロールは、今までの人生で培った自身の偏見を取り除き、この世界をありのままに見る洞察力を養い、結果、確かな知識と知恵をもたらします。こうして得られた確かな知見が、自分と自分が愛する人達や愛すべき人達と分かち合う、幸せな成功を築き、守る力になると思えるのです。
セルフコントロール・自己制御のために積み重ねる、具体的な自己改善や自己鍛錬の努力の途上における挫折に対しては、一喜一憂することなく、生涯現役で幸せな成功者になるためのセルフコントロールなのだ、という大らかな気持ちも大切だと思います。
そして、真のセルフコントロールとは建設的な自己表現に結びついたものである、という視点を忘れずにいることが、自他共に幸せな成功へと導く道しるべになると考えます。
まとめ
あなたを生涯現役に導く大きな力の一つとして、あなたの本来の持ち味を存分に発揮するためのセルフコントロールがあること、そして、セルフコントロールを誤解することによる弊害と共に、幸せな成功のための真のセルフコントロールについて、書き綴らせて頂きました。
「セルフコントロールとは、建設的な表現に結びついたものであって、破壊的な抑圧ではありません」このジェームズ・アレンの言葉によって、ともすれば、重苦しい不自由な印象を受ける自己制御というものが、生涯現役で幸せな成功を目指す方々にとって、全く新しい色彩を帯びることを心から願います。
お読み頂きありがとうございました。
引用元:
ジェームズ・アレン著「ジェームズ・アレン全一冊」(2015年「株式会社KADOKAWA」発行)p.139